土地取引が禁止されている中で、取引と同時に耕作権まで取り上げてしまったのでは、売った方はすぐにおまんまの食い上げとなる。おまんまの食い上げとなると何をしでかすかわからない。悪事を働いて代官につかまって、土地を売って食えなくなってしまったから、とでも白状しようものなら買った方も罰せられる。そこで耕作権だけを残し、土地売買が表面に出ないようにする。こうしておけば売った者がすぐに生活できなくなるようなことはない。地主となった方は小作料を取ればすむことである。ただ面白いことに、買い戻し請求権の慣行があり、一部の努力家の農民はこの請求権で買い戻した。だが大半は、能力がないゆえに売ってしまった土地を買い戻すことはできなかった。ここに、多くの地主の誕生があった。ただこの当時、寺院に売った場合は、買い戻し請求権が行使できなかった。そこで、「お寺へは売るな」が合言葉となった。江戸時代でも、都市の土地は原則として売買が自由であった。従って、江戸時代の町人の夢は、貸家を三軒ぐらい持ちたい、というものであった。
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